肉離れ(急性・慢性)

陸上競技に限らず走動作をともなう競技の「ハムストリングやふくらはぎの肉離れ」は、しっかりと治療やリハビリをしなければ、再発を繰り返したり、症状が長引いたりするなど、競技復帰後もパフォーマンスに大変影響が出る障害の一つと考えております。

急性期の肉離れの症状

肉離れを起こしやすい部位


肉離れの「急性期(受傷直後)」の症状(状態)は、 

  • 痛くて日常生活動作もままならない
  • 少し痛みはあるが歩くことは可能
  • 歩いても痛みは無いが、走ると痛みがある
  • 歩くときに痛くて片脚を引きずってしまう
  • 患部を伸ばそうとすると痛みがある
  • 患部を伸ばしても痛みは無いが、力が入ると痛みが出る
  • 一定の可動域以上の動作をしようとすると痛みが出る
  • ジョギングでは痛みは無いが、スピードを上げると痛みが出る 

など、筋肉の損傷の程度によって症状は様々です。


急性期の肉離れの原因

肉離れの原因は、 

  • 主働筋と拮抗筋の筋バランス
  • 筋力(筋肉の状態)に対しての負荷の大きさ
  • 筋力(筋肉の状態)に対しての負荷のかかり方(伸張性収縮や急激な筋収縮)
  • 筋肉の張り(tightness)
  • 筋肉の疲労
  • ウォーミングアップ不足(筋温や筋肉の柔軟性)
  • 気温 

など、その他にも様々な原因があると言われています。


急性期の肉離れの治療

肉離れの急性期の治療(処置)としては、基本的には、 

  • RICE処置(安静・アイシング・圧迫・挙上)
  • 可能であれば一定期間(数日間)の「安静」
  • 患部を伸ばしたり、痛みを確認するような動作をしない
  • 日常生活動作において著しく支障をきたしている場合は整形外科医への受診 

などをしていただき、可能な限り患部に負担がかかる動作をお控えいただくようにお伝えしています。

 しかし、選手によっては 

  • 所属しているチーム状況
  • 選手としての期限など
  • お仕事のご都合

など、個々の方々の「置かれている状況」もありますので「絶対安静でお願いします」と強く言えない場合があります。

 その場合には「痛みがある状態でパフォーマンスを継続した場合のリスク」をご説明した上で、患部または患部に関連している筋肉を最大限ゆるめ、 

  • 運動痛(ストレッチなど)
  • 動作時痛(負荷・抵抗をかけた時の痛み)

などが、最大限改善するように治療いたします。

慢性期(肉離れを繰り返している)の症状

  • 肉離れを繰り返している
  • 長期間、筋肉のつっぱり感が治らない

という場合の症状としては、

  • 治ったと思って試合や練習をするとまたピリッと痛みが出る
  • 患部を押すと痛み(圧痛)がある
  • 患部を伸ばそうとすると常に違和感・痛みがある
  • 患部を伸ばしても違和感・痛みは無いが伸びない・伸びにくい
  • 患部を伸ばしても可動域の最後まで完全に伸びきらない
  • 患部に痛みは無いものの、力が入らない(入りにくい)
  • ジョギング程度のスピードでは不安は無いが、それ以上のスピードになると再発しそうな感じがする
  • 80%くらいのスピードでは走れるが、ダッシュをするにはまだ不安がある
  • 肉離れを何度も繰り返しているので、患部が常に張っている感じがする
  • 一定時間以上のパフォーマンスをすると、患部が張ってきてプレーを持続できない 
  • 強度の高い練習をするといつも同じ場所が強く張ってしまう

など、状態によって訴えは様々です。

慢性期(肉離れを繰り返している)の原因

「肉離れを繰り返している」または「長期間、筋肉のつっぱり感が治らない」場合の原因としては、 

  • 主働筋と拮抗筋の筋バランス
  • 筋力(筋肉の状態)に対しての負荷の大きさ
  • 筋力(筋肉の状態)に対しての負荷のかかり方(伸張性収縮や急激な筋収縮)
  • 筋肉の張り(tightness)
  • 筋肉の疲労
  • ウォーミングアップ不足(筋温)
  • 気温 
  • 肉離れが完治する前に練習または競技に復帰する
  • 段階的なリハビリ(患部への負荷)を経ずに試合に復帰する(試合レベルの負荷をかける)

など、その他にも様々な原因があると考えております。

慢性期(肉離れを繰り返している)の治療

  • 肉離れを繰り返している
  • 長期間、筋肉のつっぱり感が治らない

という場合、患部や患部周囲の筋肉が硬くなり「瘢痕化(はんこんか)している状態」が考えられますので、 

  • 瘢痕化した患部
  • 痛みやつっぱり感に関連している部分 
  • の筋肉を最大限ゆるめ、 
  • ストレッチ時の痛みや違和感・伸びない感じ
  • 患部に力が入りにくい状態
  • 再発の不安
  • ダッシュ時の痛みや不安感
  • 各動作の負荷・抵抗に対しての痛みや張り・不安感 

など、各症状が最大限消失・軽減できるよう治療していきます。

 

 また、治療の際、

  • 患部の状態に対して少しずつ負荷を上げていくようなリハビリプラン
  • 肉離れを再発させないための他の部分の強化すべき筋肉
  • 各関節の可動性 

などのお話をさせていただきます。 

 ※瘢痕化した部分の治療方法としては、鍼による施術が一番「有効」と考えておりますが、鍼が苦手な方やマッサージの方が治療効果が高い場合にはマッサージによる施術をいたします。

肉離れに対しての私の考え

肉離れは、損傷の程度が軽く、治癒期間も短く、練習や試合に早期復帰でき、パフォーマンスが維持できれば特に問題はないのですが、肉離れを何度も繰り返していて治癒期間が長引くと、 

  • 他の部分の筋力低下
  • パフォーマンスの低下
  • 再発やパフォーマンスに対する不安
  • 競技に対する意欲の低下

など、色々な部分でマイナスに作用することが多々あり、場合によってはアスリートとしての「期限」にも影響を及ぼしてしまいます。

 肉離れを受傷後、しっかりとリハビリスケジュール通りにメニューを消化したものの、練習強度が上がってきた途端に、 

  • 「またピリッときた…」
  • 「また痛くなった…」
  • 「常に筋肉がつっ張る感じがする…」 

などということがよく起こります。 

 その「ピリッときた…」などの原因は、肉離れの「瘢痕化(はんこんか)した部分」が、動作の強度に対して順応(伸縮)できていない状態なのでは…と考えております。

 

 瘢痕化した部分は、損傷していない筋肉のように元通りにはなりませんが、肉離れを繰り返さないためには、

  • 原因を考え再発させないためのアプローチ
  • 瘢痕化した部分を可能な限り伸縮できるように柔らかくする
  • 強度の高い動作に順応できるような筋肉の状態に近づける
  • 患部の状態に合ったリハビリのプランニング

などが必要と考えております。

「陸上競技のその他のスポーツ障害」に関しましては、「陸上競技のスポーツ障害」の各項目からご覧ください

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